2025年5月30日
寄稿:元日本寺駐在僧 萩原賢良(西山浄土宗 西岸寺)
2025年5月8日、 羽田発デリー行きの飛行機に乗り、インドへと向かった。エコノミークラスの為、約10時間の飛行機の旅は少々しんどい。5月のインドは1年の内で最も暑い時期となり、最高気温45度近くまでなる日も多い。そんな酷暑のインドへなぜ向かったのかというと、ブッダガヤの世界遺産 大菩提寺(以下、大塔)で5月12日に行われる「ブッダジャヤンティ」に出席する為である。「ジャヤンティ」とは、簡単に言うと「誕生日」という意味で、「ブッダジャヤンティ」とは、「お釈迦さんのお誕生日会」である。お釈迦さんご自身は、2569年前、お亡くなりになられている為、お誕生日会に顔を出される事はない。その「ご本人不在のお誕生日会」に出席する為に、快適な日本を抜け出し、エコノミークラスで、約10時間、飛行機に揺られ、酷暑のインドへと向かった訳である。我ながら正気の沙汰じゃない。
私自身は、約10年前、駐在僧として日本寺に、2年間、駐在させて頂いた。ご存知の通り、日本寺は日本仏教宗派・宗門の垣根を越えたお寺なので、共に駐在僧として、お寺の維持・管理・運営を行っています。私が駐在していた時、先輩に浄土宗の番地さん他、浄土真宗、真言宗の僧侶に加え、菩提樹学園の教諭1名がおられました。駐在僧としてのインドでの悪戦苦闘の日々を、大変懐かしく思います。私は、駐在が終わった後、数年に一度、インドを訪れる程度でしたが、先輩の番地さんは、毎年、「ブッダジャヤンティ」等の大塔の行事に参加される為、年に数回、インドに来られておられました。尊敬します。その番地さんに誘われ、私も「ブッダジャヤンティ」に参加するご縁を頂く事となった訳です。


さて、今年の「ブッダジャヤンティ」ですが、5月12日、当日、朝は比較的涼しいものの、日中は40度を超える暑さとなりました。朝7時、日本寺の裏手から大塔まで、行列を作って練り歩き、お釈迦さんが悟りを開かれた菩提樹のそばに集まり、座りました。政府関係者や来賓の挨拶・講演等があり、その後、上座部やチベット、日本、ベトナム等の読経が行われ、11時頃からサンガダーナ(僧侶への食事供養)があり、食事を頂いて、散会となりました。「ブッダ ジャヤンティ」で行われる挨拶や講演等、ほとんどが英語で行われる為、私の英語力では、ほとんど理解できません。ときどき、英単語が拾えて、「あ~、あんな事言っているんだなぁ」位です。ですから、私にとって、「ブッダジャヤンティ」のほとんどの時間が、暑く、流れる汗を拭いている、正座している足が痛い、ただ、それだけの時間です。正直、辛くて「なんで今年も来ちゃったかなぁ」と後悔もしました。じゃあ、なぜ、わざわざインドのブッダガヤの「ブッダ ジャヤンティ」に行くのか。「先輩の番地さんに誘われたから」です。勿論、それが一番の理由なのですが、インド・ブッダガヤの日本寺に2年間、駐在させてもらい、僧侶として沢山の事を学ばせて頂きました。ほとんど毎日、大塔に行き、菩提樹の下、お釈迦さんが悟りを開いた場所、金剛宝座にお参りに行きました。私が駐在していた時は、まだ世界遺産に登録される前でしたので、今の様な厳重な警備はなく、素朴で、四方八方、どこからでも大塔、菩提樹、金剛宝座の近くまで行けました。


今から約2600年前、ブッダガヤの菩提樹の下で、お釈迦さんが悟りを開き、仏教が始まりました。お釈迦さんの教えは、ブッダガヤからインド全域に広がり、言語・文化を超えて、国を超えて、海を超えて、世界中に伝わり、沢山の人の悩み・苦しみを救ってきたんです。私もお釈迦さんに救われた、沢山の事を教えてもらった一人です。お釈迦さんの事を、とても尊敬しております。大好きです。「ブッダジャヤンティ」は、お釈迦さんの教えの恩恵を受けている、世界中のお弟子さんや仏教徒、僧俗共に、「始まりの地」であるブッダガヤに集まり、「お釈迦さんの誕生日」を一緒にお祝いするんです。お釈迦さん(ブッダジャヤンティ)がなければ、仏教という素晴らしい教えは無く、私達の世界の幸せも無いんです。「ブッダジャヤンティ」の奇跡を思うと不思議な気持ちになりますし、感謝の想いが体からこみ上げます。ありがとう、お釈迦さん。サンキュー ブッダ。その「ブッダジャヤンティ」が、毎年5月の満月の日に開催されます。先輩から「行くぞ!」と言われれば、行くしかないでしょう。5月16日、無事、羽田空港へ帰って来ました。日本は涼しく、とても快適です。



さて、来年の「ブッダジャヤンティ」。勿論、行きますが、あの暑さと環境を思うとうんざりしますし、また、それと同時に「ブッダジャヤンティ」に参加できる喜びがあります。来年はどんな出会いがあるのか、楽しみでもあります。また、お釈迦さんに会える。 合掌
「お釈迦さま誕生2569年 ブッダジャヤンティ」記事はこちら [8]